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  ロータート郡ゴールの大虐殺
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 No.070327002605732780    07/03/27(Tue) 00:26   by  名古屋のN [変更] [削除]
 ロータート郡の郡庁所在地のゴールで先日、マオイストがマデシに襲われて29人もの犠牲者が出たようだ。トラダールさんやマトゥーラ先生などの人権活動家、市民社会を代表する重鎮がわざわざ現地まで行って調査報告をしている。このお二人にはお世話になったことがあるので分かるのだが、そのことだけでも異例だ。下手人はインドから越境してきたギャング団とされているが、要するに王党派であるには違いない。
 集会を開こうとして両派がこぜりあいを数日繰り返したあと、事件は起きた。銃撃戦でもなく、銃弾で死亡したのは一人ないし5人と報じられていて、ほとんどが撲殺、焼殺だったようだ。悲惨である。5人のマオイスト女性は、衆目の中で強姦され、乳房を切り取られて顔を焼かれた、という。中には、数キロも追われたあげく殺害された人もいる。組織的な襲撃である。

 この事件が、マオイストが入閣するかしないか、6月の総選挙が行われるかどうか、という重大な分岐点を作ってしまったらしい。このことは大きい。
 
 ゴールは私の仕事場のひとつだったから、人々も知っているし、町の地図も頭の中にある。衝突が起きた場所もよく知っている。私の悲しみがまたひとつ増えた。言葉もない。武蔵野のOさん、中村君、熊本のH先生、皆さんがお見えになった時、最初におつれしたところがあったでしょう。あそこがゴールですよ。

 小倉清子さんはそのブログで、なぜあそこでマオイストが集会を開こうとしたのか分からない、と疑問を呈しておられる。起きるべくして起きたと私は思う。重苦しいことだが、記しておく。

 ラーハンで最初に騒動が起きた時も、その背景というか理由というか見立てというか、そういうことをここに記した。そのことと連動している。
 バラ、パルサ、ロータートの三郡が一つのまとまりを持っていることは以前も書いた。バラが歴史的にはその中心で、ビルガンジがあるパルサが今は通関拠点である。そして、ゴールはこの中部タライのもっとも辺境にあるバザールである。バグマティ川によってジャナカプール文化圏と隔てられている。1992年の大水害の場所であり、町全体が水没し多数の死者をだした。
 交通の要衝としては、東西ハイウエーに位置する、シラハ郡のラーハンに相当するチャンドラニガプールがある。しかし、今でもここはバス停に付随したバザール以上の町ではない。そこから南に下ってインド国境に接したゴールがなぜ郡庁であるのか。行けばすぐ分かるが、ゴールには巨大なローカルキングの王宮が今でも残っているのだ。コルカッタからの道路の関係でビルガンジが通関拠点になる以前は、ここがその役割を担っていた。マヘンドラハイウエーができて、ビルガンジーヘタウダ路線がカトマンズへの物資供給の大動脈となる前は、人々や物資は、ゴールを通って北上し、山を越えてカトマンズへと向かっていた。ラナどもがカトマンズで乗り回していた、いにしえのクラシックカーであるフォードもこのルートを人によって運ばれたのだ。歩くには最短距離である。従って、ビルタ制のもとで、王党派が押さえていたのである。
 マオイストは東ネパールに浸透していない。その最前線がタライ平野ではシラハやロータートなのだが、ロータート郡のゴールという町は最もインドに近くて、マオイストにとってはフロンティアでもあるのだ。ここで、公然とマオイストの集会を非武装で開くことができれば、威信はあまねく東タライに波及する可能性がある。逆に、インドに接しているぶん、反撃される可能性も最も高い。ラーハンより更に微妙な真空地帯であるといえば分かりやすいだろうか。

 おそらく、マオイストの中央が指示して集会をやらせたのではなく、地元で活動してきたマオイストが、勢いでやろうとした集会なのであろう。本気なら、武装防衛部隊くらいは、ネパールガンジでやったように、準備するはずである。

 勝ち組の勢いでやろうとしたところに、ロータートのマオイストの甘さが露呈した。だから、たかだか、地方での一集会の失敗なのだが、マオイスト中央は、その勝ち組の勢いに水が差されたことを深刻に受け止めているのではないだろうか。

 ここからは、私の憶測だが、マオイストにとってこれ以上の誤算は今後まず起きないだろう。その意味では、マオイストがこの事件を最大限に利用する路はある。ネパールの世論と国際世論、そして国連がこの事件をどう評価するかが問われている。このことによって、一気に総選挙を無しにしてしまうのか、たとえ少し延期されてもきちんと総選挙を再構築するのか、そのあたりが気になるところである。90年の新憲法だって、遅れに遅れてやって成立した。

 私は、逆に、うわさの絶えない「国王のクーデター」がこれで完全に消えたと見ている。マオイストがコングレスを追いつめて、9回裏2死満塁から、大逆転に転じることができるのか、コングレスがさらにマオイストに妥協を迫るのか、歴史は、こうして振り子のように作られていく。

 悲しいことには違いない。ゴールでの犠牲者に合掌!