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  暫定憲法(5) 政党本位の危うさ
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 No.070517204104652653    07/05/17(Thu) 20:41   by  tanigawa [変更] [削除]
暫定憲法(5) 政党本位の危うさ

第7編 憲法制定議会
暫定憲法の主目的である憲法制定議会(Constituent Assembly)は次のようにして構成され,憲法を制定する。

1.憲法制定議会の構成

・定数:425(選挙選出409,指名16)
・任期:2年。6カ月延長可能。
    議員は,所属政党からの党員資格なしの通告により,失職する。

・選挙方法:
    小選挙区制(現行法による) 205
    全国比例制         204
    暫定内閣の指名        16

・候補者の選抜方法:
  各政党は次の方法で候補者を選抜する。
  (1)小選挙区候補者は,包摂原理に則り選抜
  (2)比例制候補者は,各社会層が比例的に代表されるようにリストに掲載する。女性,ダリット,被抑圧民族,後進諸集団,マデシ等。
  (3)女性候補者は,全体の1/3以上とする。

・有権者:満18歳以上(2006年12月6日現在)のネパール市民。


2.議会の運営
・首相が,選挙後,21日以内に議会を招集。以後,議長が会議を招集。また,総議員の1/4以上の議員の要求で招集される。

・定足数は総議員の1/4.

・議長と副議長は別の政党から選出。総議員の2/3以上の多数により解任される。

・憲法制定議会は,立法議会を引継ぎ,その任務を兼務。新憲法の施行により任務を終了し,新憲法により選挙される新たな立法議会に引き継ぐ。

3.憲法制定手続
憲法案は,前文,各条文につき,投票により採決する。

(1)総議員の2/3以上の出席,満場一致で可決。
(2)(1)で否決の場合は,各党指導者が協議し,15日以内に案を決定し,7日以内に再投票し,満場一致で可決。
(3)(2)でも否決されたときは,総議員の2/3以上の出席で,出席議員の2/3以上の多数で可決される。

――以上のように,憲法制定議会でも,政党は大きな影響力を持つ。問題となりそうなのは,小選挙区の包摂原理による候補者選抜と,比例制の各社会層からの比例的候補者選抜。そんな複雑なことが本当にできるのだろうか。出来るとしても,そんな複雑なことをすれば,党のボス支配がますます強化される。選挙制度は,大先輩のイギリスのように単純明快がよい。

次に,憲法制定手続は,日本の改憲手続よりも,はるかに厳格だ。これも,もめそうだ。425人もの大議会が,満場一致なんて考えられない。満場一致になれば,それこそ全体主義,J.S.ミルなら不健全の極み,と嘆くだろう。人民は一つという,とんでもない危険な誤解に基づく規定だ。が,つくってしまったものは仕方ない。

民主主義に政党は不可欠だが,政党本位は「国民代表」としての議員の独立を侵害し,議会制民主主義を絞め殺してしまう危険性がある。日本でも,小選挙区制+比例制にしたがため,たしかに政党の力は劇的に強化されたが,肝心の議会の議論は低調,国民の政治への関心も低下,民主主義は窒息死しかけている。憲法改定がこんな無風状態で拙速に進められてよいのか。政党本位は,日本では民主主義の空洞化をもたらしている。

議員は,「国民代表」として独立して行動する。その余地を残さないような選挙制度や議会運営は反民主的であり,危険だ。


第8編 立法手続
国王と上院が削除されたので,立法手続は劇的に合理化され簡素になった。

1.法案
議員が議会に法案を提出する。ただし,財政法案と,軍・武装警察・警察等の治安関係法案は,政府提出法案とする。旧憲法では,これらの法案提出には国王の承認が必要であった。

2.採決
法案は,議会の単純多数決で可決。国王も上院も介在しないので,スッキリした。

3.認証
旧憲法では,法律成立には国王の裁可が必要であり,これがしばしば問題を引き起こした。暫定憲法では,可決された法案は議長の認証だけで法律となる。

4.政令
政令(Ordinance)は,旧憲法では国王が発布したが,この憲法では政府が発布する。法律と同等の効力を持つが,あとで議会の承認を得なければならない。承認が得られないと,60日で失効。

――一院制になり,国王も上院も立法手続に介在しないので,たしかにスッキリした。立法手続の近代化,合理化であり,ネパールの状況を考えると,これは望ましい。複雑すぎて誰が何をどこで決めているのか分からない,あるいは決められないような状況よりは,危険もあるが,ともかく中央政府が速やかに合理的な意志決定を出来るようにすることが先決である。

(注)前文からの通し読みであり,見落としや誤りがあるかもしれません。試論としてご覧下さい。