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  パンドラの箱から同時多発テロ
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 No.070903222339472622    07/09/03(Mon) 22:23   by  tanigawa [変更] [削除]
1.カトマンズ同時多発テロ
ついに本物のテロが発生した。9月2日午後4時過ぎ,カトマンズの3カ所でほぼ同時に爆発が起き,2人死亡,19人負傷。重体3人もいて,死者は増える恐れがある。

これは恐ろしい事件だ。爆発があったのはいずれもよく行く場所。トリプレスオルでは,バス停のイスの下に爆弾が仕掛けられ,バス待ちの人など1人死亡,17人負傷。死亡したのは12歳の生徒,負傷者の6人も生徒だ。

バラジュでは,路線バス内の爆弾で40歳の女性が死亡,2歳の子供を含む9人が負傷。このバスは私も利用している。スンダラでは国軍兵1名負傷。これは街のど真ん中だ。

これらの爆発に私が巻き込まれなかったのは,単なる偶然にすぎない。

2.テロルのためのテロル
これまでにもマオイストが爆弾を仕掛け,多くの死傷者を出してきた。これもテロだが,マオイストはよく統制のとれた共産主義集団であり,爆弾攻撃も統制がとれていた。

今回の同時多発テロは,よく似ているが,本質的に異なるものと見た方がよい。これは完全に無差別の,テロル(恐怖)そのものを生み出すためのテロ,本物の現代型テロであり,自爆攻撃まであと一歩だ。タライの2団体が犯行声明を出し,ネパール人民軍(NPA)は200人の志願兵をもち,共和制宣言まで全国で同様の爆弾攻撃を続けると述べた。

間違えたのではない。無差別に,恐怖を生み出すために爆発させた。外人特権は一切あり得ない。

3.パンドラの箱を開けたのは?
禁断のパンドラの箱を開け無差別テロを生み出したのは,先進諸国の無責任多文化主義者と,援助がらみでそのお先棒を担いできたネパール知識人たちだ。

先進国は,諸民族,諸文化をさんざん弾圧し,国民国家を形成し,強力中央権力と経済成長を達成し,政治的経済的基盤を確保した後で,やりすぎた諸民族,諸文化弾圧を反省し,彼らの要求を少しずつ認め始めた。が,イザとなれば,強力国家主権で諸民族,諸文化の要求をいつでも弾圧する用意は出来ている。最近の英仏を見よ。

ネパールには,そんな条件は全くない。国家権力は情けないほど弱い。西洋知識人にたぶらかされ,「国王の専制支配」などと攻撃してきたが,国王権力など同規模の先進国の大統領や首相の足元にも及ばない。ましてや歴代首相の権力など,およそ政治権力とも呼べないほど弱いものだ。

そんなネパールの現状を無視し,やれ民族自治だの連邦制だのとバカなことをいい,パンドラの箱を開けてしまった。この第一の責任は,先進国知識人にある。

4.パンドラの箱を閉じるのは?
このパンドラの箱を閉じるのは,開けるのよりも何倍も難しい。大河は蟻1匹でも決壊させられるが,堤防修復は至難の業だ。

一番手っ取り早いのは,軍事クーデター。ウワサは確実に広まっている。次の可能性は「国王=マオイスト神聖同盟」。このウワサも広まっており,今日のカトマンズポストが報じている。昨日紹介したガイジャトラ誌の「NC=マオイスト同盟」はUMLが反対するのでまず無理だろう。軍事クーデターは手っ取り早いが,国際社会が認めない。他の方法は,面白くはあるが,これでは箱は閉じられないだろう。

5.選挙の限界
公式見解は,選挙によって正統政府を樹立し,国家統一を再建するということだが,これは無理だ。ネパールの国民や社会が政治的にそんなに成熟しているのなら,そもそもこんな問題は起きない。前後転倒だ。

選挙民主主義の惨めな失敗は,アフガン,イラクで実証済みなのに,まだ懲りずにネパールを実験台にしようとしている。したたかなアメリカは,失敗後に備え,大使館の要塞化(地下に数千人収容の非常設備完備)をすすめ,また王宮前の広大な敷地の軍事基地化も進めているのではないかと疑われている。選挙民主主義を信じていないのは,実はアメリカなのだ。

いまのネパールで,投票で問題が解決すると信じている人は,よほど脳天気といわざるをえない。

6.保守思想の出番
いまのネパールに決定的に欠けているのは,本物の保守思想だ。ルソー,マルクス,毛沢東よりも,ネパールが学ぶべきはE・バークだ。

保守思想は進歩的でも開発志向でもなく,したがって援助資金獲得の役には立たないが,先進国知識人は罪滅ぼしのため,自腹を切って保守思想を伝えるべきだ。

保守思想は,人間理性の限界を自覚し,国家を設計図通りに建設し運営することは不可能だと考える。国家はあまりにも複雑なものだから,歴史的に生成してきた諸制度を可能な限り尊重しつつ,時代に合うように修正していく。また,人間は理性よりもむしろ情念で動くものだから,情念に働きかける権威を政治の中に安定的に位置づけ統治に利用する。

7.自生的秩序の尊重
この保守思想は,多民族・多文化問題を解決する最善の方法だ。

多民族・多文化問題は,近代合理主義やマルクス主義では解決できない。たとえば,民族自治,連邦制にしても,その区画をどうするか,などということは,あまりにも複雑すぎて,人智ではいかんともしがたい。もしいまの合理主義的設計主義的方法で民族区画,連邦区画を定めようとすれば,必ず血を見る。民族浄化は不可避だ。

民族自治や連邦制に移行するにしても,それは結局,歴史の中で生成してきたものを緩やかに追認していくという形にならざるをえない。これは保守の考え方である。

9.権威のパッチワーク的修繕
また,保守思想によれば,権威の回復も不可避だ。ネパール国家の権威は,2005年国王クーデターによりほぼ崩壊した。権威は権力以上に重要で,権威なくして統治できた国は一つもない。ネパールは失墜した国家の権威を何によって回復するか?

特効薬はない。使えるものは何でも利用し,パッチワークで修繕していく。儀式王制,選挙,国際社会の支持等々。選挙は重要だが,選挙だけで支配の正統性が確保されることはあり得ない。どの先進国でもそうだ。ましてやネパールにおいては。

* Kathmandu Post & The Himalayan Times,3 Sep.2007.

写真:共和制宣言を求めるマオイストYCLの横断幕